普段から冷たいものをあまり食べない私がジェラート作りをするようになるなんて。
正直、私が一番驚いてるかもしれない。
ジェラートを作りをすることになったきっかけをまとめてみようと思ってこれを書いています。
まずは18年前に乳がんで他界した姉のこと。
冷たいもの、甘いもの、白いもの、特に牛乳は身体に良くないからとお医者さんに止められていたけれど姉はその全てが好きでした。真っ白なお餅もお酒も、ほんとに好きなものだらけなのに、治療のためにがまんがまん。
そして、病気が発覚してから数年後に息を引き取りました。
ずっと一緒にいると思ってた大切な姉を失い、寂しくて怖いくらい辛かった。
どうせもう食べられないなら好きなものを食べさせてあげたかった、と悔しくて悲しくて自分を責め続けた。
その後自分の心身も壊したのをきっかけに、薬膳をはじめとした伝承医学や食養生を学び始めました。
(ありがたいことに食養生の本も出版させていただきました)
勉強を続ける中であるときふと思ったんです。
「たしかに食材の効能はどれも素晴らしい。だけどこの世には、それを超えるものが確実にある」
それは、「おいしい!」「うれしい!」という氣持ち。
身体に良いからと無理やり食べてもそれが嫌いな食材でストレスになれば逆効果だし、確かに身体のためには避けた方がいい食べ物もある。人間は心も身体もみんな違うし、数値やデータだけでは測れないものがあるよね。
ほんの一瞬だったとしても、「ああ、幸せだなあ〜」というよろこびエネルギーはどんな食材の効能をも超えるもので、生きている証なんだ、って感じたんです。
そして2011年、アレルギーや病気を持つ人でも安心して食べられるお菓子屋さん《青家のとなり》を中目黒の本店《青家》の横にオープン。
白いお砂糖や添加物は一切使わず、安心安全な食材だけをセレクトして手作りの焼き菓子や和菓子、薬膳菓子など幅広く作っていました。母が昔よく作ってくれたお菓子も参考に、姉に食べてもらいたかったものばかり。ぜんぶ美味しかったなあ〜
(あおやの焼き菓子セットは現在は販売しておりません)
2018年に東京の2軒の店を閉めて京都に帰ってからは旬の無農薬フルーツや花を発酵させて季節の酵素シロップを作るようになり、その楽しさに夢中になりました。
日本全国の生産者さんとのご縁を頂く度に、直接会いに行くことが仕事を超えて趣味になってきて。
自然と調和した元氣な土に触れ、風を浴び、微生物を感じながら直接お話を伺っていると、ますます自然への敬意と食材への愛着が湧いてくるし、「絶対に捨てたくない」「全て活かし切りたい」という思いが溢れてくるんです。
シロップを作るときに生まれる発酵したフルーツのパワーって、ほんと、ものすごい。その発酵フルーツをベースに、いろんな調味料を生み出す楽しさにまたハマっていったのだけど、青家の微生物は元氣さを増す一方。
笑ってしまうほどパワフルな発酵力に感動している時、ふと姉から言われた氣がしたんです。
「ジェラートにして」
と。
(写真はレモンとカレンデュラの蕾)
なるほど、確かにジェラートならベストな発酵の瞬間を冷凍で閉じ込められるし、果実の繊維もまるごと食べられる。
何より発酵した無農薬果実は安心安全だし、とってもヘルシーで身体にもやさしく風味もすばらしい。
その良さをすべて活かしたジェラートにするのは、めちゃくちゃいいアイデア!
発酵果実+青家の酵素シロップ+最高のミルクで、最幸に美味しくて身体もよろこぶジェラートを作る!!!
そう決めて、さっそく青家のジェラートブランド〈ナツメジェラート〉プロジェクトを立ち上げ、まずは最高のミルク探し。
日本にはたくさんの牧場があるけれど、その中でもわたし的に一番よかったのが出雲で自然放牧されているブラウンスイス牛乳。
本当にいいミルクって、風味豊かでいてとてもサラッとした上品な味わい。そして後味もすばらしくきれいなんですよね。
青家の発酵果実と酵素シロップとの相性もお見事!!
今まで食べたことのない、びっくりするくらいおいしいジェラートが生まれました。
もちろん発酵果実そのものがおいしいので、ミルクを使用しないシャーベットも作りましたよ。
こちらはお砂糖も一切加えず(発酵の際のみ使用)、無農薬レモン汁と合わせるだけで、素材そのものも美味しさを活かしきっています。すごいですよね!
食べた後のキレの良さをわたしは「後ろ姿のうつくしさ」と表現するのですが、ナツメジェラートはまさにそのもの。
全くべたつくことがなく、すーっとやさしく消えていく感じがたまらないのです。
ジェラート作りのあと残った皮や種だけは青家の畑に撒いて、捨てるものはほぼゼロ。
畑で生まれたものがまた畑に還る、完全に循環する形が出来上がりました。
姉が食べたら、きっとよろこんでくれるに違いない。
だって冷たいジェラートにさほど興味がなかったわたし自身が、今はその美味しさに本氣で感動しているから!
わたしは普段からふと降りてくる(というか内から湧いてくる?)ひらめきをキャッチしてものづくりすることを大事にしてるのだけど、「あ、いまのお姉ちゃんがくれたメッセージだよね」と思うことも多くて、一緒に創り上げてる感じがするんです。
そして今回、このナツメジェラートプロジェクトを進めるにあたって、自分の中でかなり大きな変化があったのです。
それは、初めてまわりの人に、素直に「助けて」と言えたこと。
わたしは姉が亡くなり東京の店を引き継いだ時からこれまで、なんでも自分で頑張らないといけないと思い込んでいました。
この世で一番信頼できる人を失ったあと、人に騙されたり適当に扱われる経験を重ねる度にわたしの心は傷だらけになってしまって、知らないうちに固く閉じてしまっていました。今思えば自分で自分を信じられず、自ら世界を閉じてしまっていたのだけれど。助けを求めればきっと手を差し伸べてくれる人はたくさん居たのに、そのやさしい氣持ちさえも拒絶していた時代が長かったのです。
ほんとにここ数年のことです。まわりの人に素直に頼ったり、苦手なことはそれが得意な人にお任せしたり、「しなきゃいけない」ことを次々と手放して「したい」ことにフォーカスできるようになったのは。
人は人によって傷つくこともあるけれど、いつだって人に救われながら生きている。
自分一人で頑張ってるつもりでいても、実は助けられている。人間は一人で生きることはできないから。
そこから青家も、一人一人の得意を活かした、関わる人全てがよろこびと豊かさを循環できる会社として育てることに決めました。やっと、大切なことに氣がついたのです。
そして2022年秋、念願叶って京都に青家の工房ができました。
ジェラート製造室を作り、さあ始めよう!と思ってはみたものの、実際にやってみたらジェラートマシンの仕組みが私には難しすぎて使えなかった(涙)
そこで私が最も尊敬しているパティシエの友人よしこちゃんに「助けてほしい」と伝えてみたのです。
彼女はジェラート作りをしたい!と思った時からずっと親身に相談に乗ってくれていて、わたしの申し出を快く引き受けてくれました。そして彼女を筆頭に青家ジェラートチームを立ち上げ、わたしが目指す味とバランスを見事に実現してくれました。
ジェラートの試食をするたびに、パティシエよしこちゃんとスタッフへの感謝の氣持ちが溢れます。
人を信頼して、みんなで一緒に作り上げるよろこびを私に教えてくれたナツメジェラート。
そして2023年11月1日。
本格的に《ナツメジェラート》を始動。ご家庭でも贈り物でも楽しめるミルクジェラート6個セットがついに発売になりました。
自然放牧乳×なつめ、クコの実、月桃を組み合わせた薬膳setと、自然放牧乳×発酵果実のset。
その全てにあおやの酵素シロップを使用しています。
(6個setにはシャーベットは入っておりません。パイントカップのみの販売になります。)
「つながり」から生まれた宝物。
はっきり言って、素材と製法にこだわり抜いた、相当な自信作です。
こんなに美味しくて身体にやさしくて腸も喜ぶジェラートは、どこにもないと思います。
ちなみに《ナツメ》には、《核の中心》という意味があるんです。自分のど真ん中の核!
純粋なよろこびこそが、命の核だとわたしは思います。
全てのジャラートにナツメが入っているわけではないですが、響きが好きでブランド名にしました。
ぜひぜひ、一度お試しください♡本氣でお召し上がりいただきたいジェラートです♡
2023年11月1日 青家 青山有紀